彼女のトライアル
プリーツ プリーズのある日常
第2回 短編映画の構想を練る

短編映画をつくってみよう。
大橋主我がそう考えたのは、日本に帰ってきて数ヶ月が過ぎた頃だった。
新しい仕事が始まり、変化の多い毎日が慌ただしく過ぎていくなか、日記をつけているときにふと閃いたと彼女は言う。
5月のある日、ヴィム・ヴェンダース監督の『東京画』でロケに使われた旧川喜多別邸(旧和辻邸)を訪れた。
その環境に身をおいて、映画をつくることについて想像を巡らせた。

緑の蒼さのなかに佇む江戸時代の日本家屋にオレンジ色のトップスが映える。
「わたしが持っているプリーツプリーズの中で一番のお気に入りです。
着るたびに踊りたくなるような、とても自分らしくいられる服です。
この空間の雰囲気とは正反対のようですが、正反対の者同士が惹かれあうこともある、今回はそんな組み合わせになりました」


神保町の専門古書店で購入した古いシナリオを持ち込み、読んでノートを取った。リサーチのために観てきた短編映画を思い出しながら、自分の企画に取り入れられそうな点をピックアップする。
ストーリーの構成や映画制作について考える。
川喜多映画記念館の別邸で過ごした時間は、実りあるひとときとなった。
「坂を上がると、木々の中から現れた別邸は思わず声が出てしまうほど美しかった。ひとつひとつのショットが絵のように描かれている小津安二郎さんの映画の世界に入れてもらえた、そんな気分でした。『東京画』の中で笠智衆さんが座っていらっしゃった場所に座るということに、子どものようにはしゃいでしまいました。小津さんのように妥協せず、そして笠さんのような謙虚な心を持てたらと思いました」
彼女が東京藝術大学 大学院映像研究科映画専攻の修了上映会に出かけて『August in Blue』という短編映画に出会ったのは3月のこと。
監督・脚本を手がけたエハラ・ヘンリーを質問攻めにしたのがきっかけとなり、友人になった。
短編映画のつくり方や脚本の考え方など、アドバイスや意見をもらうため、大学の図書館で待ち合わせした。

「この日は雨が降っていたのでこのコーディネートを選びました。気分が落ち着き、明るくなります。
私は雨の日には気分が落ち込みがちです。だから気分がよくなる服を着たり、自分にきれいなお花を買うことで良い一日にするようにしています」
ヘンリーは、オランダと日本に住んだ経験をもとに、言葉に頼らないコミュニケーションの力を映画づくりに活かすようにしている。
『August in Blue』でも脚本を完全に固めずに、俳優の自然なモチベーションを引き出すことを大切にしたと言う。
大橋はそんな映画制作のスタイルにインスパイアされ、自身の映画づくりに活かしたいと考えている。
「わたしは言葉を交わさなくても心地よくいられる関係に心が落ち着きます。だからこそ沈黙を大切にしたいので、映画にも取り入れてみたいと思っています」
目下の悩みは、仕事が忙しくなり、映画のための時間をつくるのが難しくなってきていることだ。
それでもシーンのひとつ、台詞のひとつでも――彼女の短編映画づくりは少しずつ進んでいる。

着るひと:大橋主我
(スタイリングも本人による。アクセサリー、バッグなどの小物はすべて私物)
撮影:原田教正
ヘア&メイクアップ:新城輝昌(資生堂)
構成:原田環+中山真理|カワイイファクトリー
コンセプト&ディレクション:北村みどり