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LAB. 01 BEYOND THE DIMENSIONS

LAB. 01 BEYOND THE DIMENSIONS

「BAO BAO ISSEY MIYAKE LAB.」は、三角形のピースのまだ見ぬ可能性を探る試みです。純粋な好奇心を原動力に、クリエイターや専門家たちと研究を重ね、少し先の未来を生み出します。

「四次元空間では、BAO BAO ISSEY MIYAKEの三角形のピースはどうなる?」という問いから、高次元空間をテーマに視覚芸術作品を制作するアーティスト、堂園翔矢氏との取り組み「LAB. 01 BEYOND THE DIMENSIONS」が始まりました。

ここでの四次元とは、数学の「四次元ユークリッド空間」を指しています。これは、縦・横・高さの三次元に、さらに独立したもう一つの軸を加えた、位置が四つの座標で決まる空間のことです。そのため本来は直接「見る」ことはできない存在ですが、堂園氏は四次元空間内で回転運動させた三角形の一瞬の軌跡を「投影」することで、知覚できる状態にしています。

三角形のピースを四次元で動かし、三次元へと投影し、改めて二次元のグラフィックとして描き出すという、次元を横断した視覚表現。見ることができない世界の、一つの見え方の研究です。

LAB. 01 BEYOND THE DIMENSIONS

点、線、面、立体。
私たちが認識している三次元空間の先には、どのような世界が広がっているのだろうか。

BAO BAO ISSEY MIYAKEのプロダクトは、複数の三角ピースによって構成されている。平面では単なる幾何学形状である三角形は、バッグという構造の中で互いに連動し、三次元空間の中で立体的な表情を見せる。その振る舞いには、幾何学的な構造が物質として現れることで生じる独特の美しさがある。

私は、高次元空間をテーマに視覚芸術作品を制作してきたアーティストである。四次元ユークリッド空間における幾何学オブジェクトの運動をコンピュータ・プログラミングによって可視化したグラフィックの研究と作品制作を、10年以上にわたり続けている。

私たちは四次元空間を直接「見る」ことはできない。では、それをどのように知覚することができるだろうか。その方法の一つが「投影」である。私たちの世界では、物体に光を当てることで影が生まれる。これは三次元の物体が二次元の平面に投影された結果である。同様に、四次元空間のオブジェクトに光を当てることで、その影を三次元空間に投影することができる。私たちが目にする高次元の形態は、このような「影」として現れるものである。

本取り組みでは、BAO BAO ISSEY MIYAKEのバッグを構成する幾何学的要素と、私が研究してきた高次元芸術の手法を交差させた。三角ピースを四次元空間の中で振る舞う幾何学オブジェクトとして捉え、その運動を三次元へと投影することで、グラフィック作品とプロダクトとして可視化している。

これは、私たちが直接見ることのできない三次元空間の先にある、美の可能性を探る試みである。

堂園 翔矢

堂園 翔矢
アーティスト/デザイナー/プログラマー

1988年生まれ。2014年情報科学芸術大学院大学[IAMAS]修了。宇宙や高次元など人間が直接知覚することのできないスケールや次元を対象に、視覚芸術を中心とした作品を発表している。プログラマーとしてDUMB TYPE、梅田宏明、小㞍健太らのプロジェクトに参加。アルスエレクトロニカ、文化庁メディア芸術祭などで受賞。京都精華大学非常勤講師(〜2025年)。

LAB. 01 BEYOND THE DIMENSIONS
LAB. 01 BEYOND THE DIMENSIONS

本取り組みを通して開発されたバッグ「LAB. 01」は、BAO BAO ISSEY MIYAKEの幾何学的な要素と、堂園氏が研究してきた高次元芸術の手法を掛け合わせることで生まれたグラフィック作品を、新たに開発した仕様の「LUCENT」シリーズのトートバッグにプリントしたアイテムです。高度なインクジェット技術により、グラフィックを構成する繊細な線を忠実に再現。三角ピースから生まれた、ひとつひとつ形状の異なるグラフィックが、前面と後面で異なる表情を見せながら、美しい調和を生み出します。
また、「LAB. 01」を通して開発された「LUCENT」シリーズの新仕様では、通常約2mmある三角ピース同士の間隔を、繊細な手作業によって約0.8mmまで縮小。ものを入れることで平面から立体へと変化する、BAO BAO ISSEY MIYAKEならではの構造を保ちながら、連続性のある大胆なグラフィック表現を可能にしました。
カラーは、本展のために制作された作品を忠実に投影したWHITEと、そのイメージを反転させたBLACKの2色展開。それぞれのカラーで、異なる奥行きと視覚体験を表現しました。

LAB. 01 BEYOND THE DIMENSIONS


「人間は四次元空間を知覚できるか?」
この抽象的かつ根本的な問いに長いあいだ興味をもってきたのは、数学者、理論物理学者や心理学者だけではない。パブロ・ピカソをはじめとした芸術家はこの問いを出発点として原始的キュービズムの新たな方向性を見い出し、シュールレアリズムの巨匠サルバドール・ダリは四次元超立方体の展開図を宗教的ワンシーンに埋め込んだ作品を残した。しかも数学者エスプリ・ジューフレが記した四次元物体の描画の方法論に関するテキスト「Traité élémentaire de géométrie à quatre dimensions」は、キュービストたちに少なからぬ影響を与えた。そう、歴史的にも、四次元空間は芸術家に新鮮なインスピレーションを供給し続けてきたのだ。

現代に至っても、四次元空間と芸術との関係性は切れ目なく息付いている。堂園氏はその流れを、華美な装飾を排したシンプルかつ精緻なグラフィクスに昇華した。この作品は、BAO BAO ISSEY MIYAKEのアイコンである三角形のピースを四次元空間内で回転し、その軌跡を平面に投影して描画したものである。

われわれが日常暮らしている三次元空間では、その回転の自由度は3つしかない。例えば航空機操縦の用語では、3つの回転はそれぞれ、ヨー、ピッチ、ロール、と名付けられている。ところが四次元では回転の自由度は6に倍増し、途端に人間にはコントロールするのが難しくなってしまう。つまり、それだけ四次元空間は「広大」で「自由」かつ制御の効かない「荒くれ者」なのだ。

もし、この荒くれ者である四次元空間を直感的に知覚することができるのであれば、それは人間の根幹的な認知能力が大きく拡張されることを意味する。そのために堂園氏が提示した方法論のキーワードは、「動き」「投影」「陰影」だ。どうか、堂園氏の作品群を通して四次元空間の自由度を体感し、ご自身の感性を解き放ってほしい。

石井 豊

石井 豊
数学者/九州大学大学院数理学研究院教授

1970年横浜市生まれ。1992年に京都大学理学部卒業、1997年に東京大学大学院数理科学研究科博士課程を満期退学。九州大学大学院数理学研究院助手、助教授、准教授を経て、2018年より同教授。この間に、パリ大学オルセー校で招聘准教授、レンヌ大学で招聘教授。専門である高次元複素力学系の研究を動機として、最近ではバーチャル・リアリティを用いた四次元空間におけるフラクタル図形の可視化の研究も進めている。

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