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TYPE-X Inkjet 4D Print project

TYPE-X Inkjet 4D Print project

「TYPE-X Inkjet 4D Print project」は、産学連携によるプロジェクトです。

Inkjet 4D Printとは、東京大学大学院の研究グループ(※1)が開発した、インクジェットプリンターで印刷を施したシートを加熱するだけで、理論上どんな立体にも自動変形する折り紙を実現できる世界初の技術です。特殊なパターンがプリントされた熱収縮シートは、70度以上のお湯に入れるだけで、あらかじめ設計された折り紙の立体形状に変容します。

A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、この革新技術を活用した「TYPE-Ⅹ Inkjet 4D Print project」を2024年にパリでのインスタレーション形式で発表しました。この展示では、一枚のシートから造形された多様な形状のアクセサリーのプロトタイプを紹介し、大きな注目を集めました。
製品化に向けてさらなる技術の可能性を追求した結果、本プロジェクトのプロダクト第一弾として、美しい形状のピアスが完成しました。シートを温めることで平面が立体に変化し、精密に設計された形状のデザインが現れます。自在に変形する独自のプロセスは新鮮であり、まさに“四次元”ともいうべき驚きと楽しさを兼ね備えたアイテムです。

富士フイルム株式会社が独自に開発した「高輝度メタリックインクジェット技術」(※2)を取り入れることで、金属のような表情を持つシルバーもブラックに加えて展開します。

TYPE-X Inkjet 4D Print project

※1
東京大学大学院工学系研究科の鳴海紘也特任講師(現 慶應義塾大学准教授)、川原圭博教授、同大学院総合文化研究科の舘知宏教授、同大学院情報理工学系研究科の五十嵐健夫教授、宮城大学事業構想学群の佐藤宏樹准教授、Nature Architects株式会社の須藤海氏、エレファンテック株式会社の杉本雅明氏らによる研究グループ。
「Inkjet 4D Print」技術の発展のために、本プロジェクトが約5年前に発足。その後、富士フイルム株式会社の研究メンバーが新たに参画。製作協力:タキロンシーアイ株式会社、有限会社ケンシアート

※2
写真フィルム分野で培った独自の粒子配向技術により、粒子を正確に配列することで輝度の高いメタリック調印刷を可能としたインクジェット印刷技術。

慶應義塾大学理工学部 准教授 鳴海紘也氏より
3Dプリントに代表されるデジタルファブリケーションの分野では、印刷物をなんらかの刺激により自動変形させる「4Dプリント」や、折り紙を自動で折る「自己折り」の技術がさかんに研究されています。イッセイ ミヤケの衣服が織りなす動的なかたちは、最先端の研究と比較しても比類なき存在であり、我々が研究を進めていく上での大きな目標でした。今回我々は、非常に複雑な折り紙を自動で折る方法を実現しましたが、協業を開始した時点では耐久性・生産性・意匠性に関してたくさんの課題が残っていました。「単なる研究成果」を今こうしてお披露目できるのは、チームのメンバーが粘り強く、なにより楽しくプロジェクトに取り組んできたからです。体験していただく皆様にも楽しんでいただければ幸いです。

鳴海紘也氏
2020年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。博士課程在籍中に日本学術振興会特別研究員、科学技術振興機構 ACT-I「情報と未来」個人研究者などを務め、2020年4月より東京大学大学院情報学環助教。2021年4月より同工学系研究科特任講師、2024年4月より慶應義塾大学理工学部准教授。専門はヒューマン・コンピュータ・インタラクションで、特に特殊な素材と構造を活用したデジタルファブリケーションや形状変化インタフェースなどの研究に従事。主な受賞歴として、2015年UbiComp Honorable Mention Award、2020年度東京大学総長賞、2023年第7回羽倉賞、2024年船井研究奨励賞、2025年マイクロソフト情報学研究賞など。

エレファンテック株式会社 Co-Founder / 顧問 杉本雅明氏より
当社は、回路基板をインクジェット印刷などにより、環境負荷を大幅に下げて製造する事業を行っています。Inkjet 4D Printは、ファッション分野の社会課題を勉強する中で、手間のかかる縫製工程をインクジェット印刷技術で代替できないか探るところから始まりました。最終的には、布地ではなく薄いプラスチックフィルムで実現することになった本技術ですが、多くの仲間達と研究を進めていく中で、イッセイ ミヤケとのプロジェクトに繋げることができました。今回の協業は、異分野の専門家たちがお互いに驚嘆する技を繰り出しながら、練り上げていった成果です。ぜひ、多くの方にもその感動を体験いただきたいです。私のように折り鶴が折れない人でも、勝手に折り上がりますので心配ご無用です!

エレファンテック株式会社
エレファンテック株式会社は、独自の金属インクジェット印刷技術を軸に、環境負荷を大幅に削減するプリント基板技術「SustainaCircuits」を開発、提供しています。
当社製法を業界標準にするため、今後は自社での量産製造だけではなく、製造装置やインクなどの材料の提供を通じて、技術の普及を図り、持続可能な開発目標の達成とエレクトロニクス産業の革新に貢献していきます。

Nature Architects株式会社 代表取締役 CEO 須藤海氏より
加熱するだけで平面印刷物があらゆる立体に変形するInkjet 4D Printのポテンシャルを最大限発揮できるように、私たちNature Architectsはコンピュテーショナルデザインによる意匠・パターン設計を担当させていただきました。折り紙特有のポリゴナルなテキスタイル表現と富士フイルムの高輝度メタリックインクジェット技術による美しいシルバーが融合することにより、全く新しいプロダクトのかたちが生まれました。熱をきっかけとしてまるで生き物のように、デザインされた自らの姿に変形していく様は多くの方々に驚きと感動を与えると確信しています。

Nature Architects株式会社
メタマテリアルを活用した最先端の設計技術で様々な製造業メーカーに対して従来製品を超える機能を実現する設計図面を提供する東京大学発スタートアップです。部材一体化/材料代替による軽量化・コスト削減やリサイクル性の向上、振動・音・変形・熱に関する機能の向上などにより、競争力のある製品を生み出しあらゆる製造業の新市場事業の開拓を強力に支援しています。

富士フイルム株式会社 グラフィックコミュニケーション事業部 マーキング技術開発グループ 伊藤織恵氏より
今回当社は、平面の印刷物をお湯につけるだけで立体へ変化する画期的な技術であるInkjet 4D Printに、加飾の観点から参画させていただきました。イッセイ ミヤケの洗練された思想やデザインに触れ、プロジェクトメンバーとの刺激に満ち溢れたディスカッションが今回の体験型プロダクトに繋がっているのだと思います。意匠性を損なわず、加温や自己折りに耐えるという難しい課題を乗り越えることで、アクセサリーなどファッションの世界で、高輝度メタリックインクジェット技術の可能性を新たに見出すことができ、大変嬉しく思います。インクジェット印刷ならではのデザイン、色表現でとびきりの個性を多くの皆様にお楽しみいただければ幸いです。

富士フイルムホールディングス株式会社
富士フイルムグループは、「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」をグループパーパスに掲げ、社会課題の解決と持続可能な社会の実現への貢献を目指し、「ヘルスケア」「エレクトロニクス」「イメージング」「ビジネスイノベーション」の4セグメントで事業展開しています。インクジェット印刷事業分野では、「ヘッド」「インク」「画像処理」全てを自社グループ内で一貫して開発できる強みを活かし、先進的なインクジェット印刷技術の開発に取り組んでいます。