TYPE-XIII Atelier Oï project

「TYPE-XIII Atelier Oï project」は、スイスを拠点とするデザインスタジオatelier oïとA-POC ABLE ISSEY MIYAKEの協業による、「一本のワイヤー」と「一枚の布」を融合させた新たなコンセプトによる照明器具のプロジェクトです。
このプロジェクトから誕生した照明器具のプロトタイプをミラノの旗艦店ISSEY MIYAKE / MILANでは、4月8日(火)から4月13日(日)までのミラノデザインウィーク期間中、インスタレーション形式で展示しています。
建築やプロダクトデザインなど、多岐にわたる分野で活躍するatelier oïと、異分野や異業種との協業を通じてこれまでにない服づくりを探求しているA-POC ABLE ISSEY MIYAKE。この二者のデザインに対する思想やアプローチへの共鳴から、プロジェクトはスタートしました。そして、ものづくりのプロセスを大切にしながら、お互いの視点や技術を交差させ、絶え間ないアイデアの交換を通してプロジェクトを進めてきました。
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEはこれまで、身体に向き合いながら「一枚の布」の持つ可能性をさまざまな技法を用いて追求し、独自の衣服を創り出してきました。本プロジェクトでは、それを更に一歩前に進めて、照明という新たな領域に挑戦しました。本展示では、atelier oïとの協業から生まれた二つの照明器具シリーズをご紹介します。
O Series

「O Series」は、日本のポータブル照明メーカー「Ambientec」と共同開発したポータブル型の照明器具シリーズです。人間の感性を中心に据えたアプローチを採用し、使う人が日常生活の中で自由に好きな場所に持ち運びでき、多様な空間や環境にも調和するデザインが特徴です。
このシリーズは、花が持つ繊細な美しさとしなやかさからインスピレーションを得ています。季節や迎えるゲストに合わせて空間に花を生けるように、その時々の気分や環境に応じてアレンジが可能なデザインを追求しました。プリーツのひだから洩れるやわらかな光が空間を照らし、日常にやさしく寄り添う、まるで一輪の花のような照明器具です。
シェードには、atelier oïが構造設計を手掛けたエレガントな楕円形のワイヤーフレームと、A-POC ABLE ISSEY MIYAKEの服づくりに活用されているリサイクルポリエステルをベースにした「Steam Stretch」素材を採用しました。「Steam Stretch」は、一枚の布にデザイン要素をあらかじめ織り込み、熱を加えることで意図した部分の布を収縮させ、繊細で立体的なプリーツ形状のテクスチャーを生み出す独自の技術です。
フレーム内に浮かび上がる有機的な布の光と影が、幻想的な美しい表情を生み出し、空間を柔和に彩ります。さらに、楕円形のワイヤーと布は取り外し可能で、使用しない時にはフラットに折り畳むことができ、機能性や収納性にも優れています。その可変的なデザインは、生活空間に新たな価値と楽しさをもたらします。

A Series

「A Series」は、A-POCを象徴する無縫製ニットによる照明シリーズです。このシリーズでは、チューブ状のニット生地にあらかじめシェードの形状が編み込まれており、フレームとなるワイヤーを挿入することで、立体的なフォルムに変化します。さらに、連続して編まれたシェードは、カットする位置によって、シングル、ダブル、トリプルなど、空間に合わせてさまざまな形状や大きさに仕上げることができます。A-POCならではの遊び心に溢れたデザインが特徴です。
展示では、スペインの照明ブランド「PARACHILNA」の協力を得て実現したペンダント型照明器具のプロトタイプを展示します。PARACHILNAは、誠実なデザインと厳選された素材、そしてクラフツマンシップによる独創的な照明づくりで知られています。

atelier oïより
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、素材への深いこだわりという点でatelier oïと共通点のある、非常に興味深いブランドです。この協業の魅力は、atelier oïとA-POC ABLEの両チームが構造やテクスチャーを通じて新たな共創のプロセスを生み出している点にあります。
専門領域の境界がますます曖昧になる中で、歴史的な影響からプロダクトや空間デザインにまで広がる新たな方向性を探る機会が生まれています。これは、素材の可能性を常に押し広げてきたA-POC ABLEに見られる、イッセイ ミヤケの革新的な精神と深く共鳴しています。
例えば、生地のように一見シンプルな素材でも、プリーツ加工や構造次第でその外観や質感が完全に変わります。光もまた重要な要素で、光は単に照らすだけではなく、陰影や明暗のコントラストを生み出し、形を作り出します。
この協業の最大の特徴は、ピンポンのように絶え間なくアイデアが行き交うプロセスです。一つ一つのやり取りが次のステップを引き出し、プロジェクトをさらに進化させ、新たな視点をもたらします。この共創の探求プロセスが、この協業をとても刺激的で特別なものにしているのです。

atelier oï
atelier oïは、1991年にスイスのラ・ヌーヴヴィルでオーレル・エビ、アルマン・ルイ、パトリック・レイモンの3名によって設立。その活動は、チームワークの精神と素材との深い結びつきを体現している。40名からなる多分野にわたるチームで、建築、インテリアデザイン、プロダクトデザイン、セノグラフィーを融合させ、自然現象や職人技を再解釈しながら、分野の垣根を越えた活動を展開している。カンボジアでの人道的プロジェクトの取り組みの他、数々の受賞歴や多岐にわたるグローバルブランドとのコラボレーションを通じて、世界的な評価を得ている。