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TYPE-Ⅳ Yuma Kano project

TYPE-Ⅳ

Untitled (Some Rust III #100–279), 2022 © Gottingham Image courtesy of
ISSEY MIYAKE INC., Studio Yumakano and Studio Xxingham

新進気鋭のデザイナー狩野佑真氏とのプロジェクト、「TYPE-Ⅳ Yuma Kano project」。

ものづくりの長い歴史の中で悪者とされてきた錆。よく見ると、さまざまな色が複雑に混ざり合い、とても美しい模様を作り上げていることに気づきます。本来であれば誰もが見落としてしまう錆の模様に、狩野氏の視点と発想が加わることにより、新たな価値が生まれました。

そんな狩野氏の代表作「Rust Harvest|錆の収穫」は、錆びた金属板から錆のみをアクリル樹脂に転写する斬新な手法を用いた、オリジナルプロジェクトです。日光・雨・土・海水などの自然要素を用いて自身の手で金属板の錆を育て、そこから錆のみを剥がした金属板を再び錆びさせて、新たな錆を作り出す。まるで農作物を生産するサイクルのように錆の模様を“収穫”していきます。

本プロジェクトでは狩野氏の代表作「Rust Harvest|錆の収穫」からアイデアを発展させた、唯一無二のジーンズを発表しました。

私たちの現代生活に欠かすことのできない存在となったジーンズは、履くたびに生地が柔らかくなり、色の変化が生じる衣服です。その変化は決してネガティブなものでなく、着用者それぞれが積み重ねてきた時間や経験を改めて振り返り味わうことのできる、価値のある変化です。 A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、狩野氏が錆にもたらす新たな価値とジーンズとの高い親和性を見出し、今回のプロジェクトが結実しました。

TYPE-Ⅳ

Untitled (Some Rust III #311), 2022 © Gottingham Image courtesy of
ISSEY MIYAKE INC., Studio Yumakano and Studio Xxingham

TYPE-Ⅳ
錆模様を織り込んだデザインが特徴の5ポケットジーンズ。 ジーンズのパターン線を表面に刻んだ一枚の金属板をさまざまな環境で錆びさせることで、パターン線がきっかけとなり、予期せぬ美しい錆模様を“収穫”することに成功しました。素材には、タテ糸にポリエステル、ヨコ糸に太さの異なる2種の綿を使用し、綿糸の太さと複雑な織組織で立体的な錆の表情を表現しています。

TYPE-Ⅳ

Untitled (Some Rust III #133–261), 2022 © Gottingham Image courtesy of
ISSEY MIYAKE INC., Studio Yumakano and Studio Xxingham

狩野佑真氏より

創造を想像する

全ては、2020年秋の代官山にて1枚の絵画を観たことがきっかけだった。その“絵”は7色の糸で色鮮やかに織り上げられており“服”の形をしていた。「TADANORI YOKOO ISSEY MIYAKE 0」である。まさに絵を観るよろこびと服を着るたのしみが融合していた。

一方で私は「Rust Harvest|錆の収穫」という実験プロジェクトを2016年からスタートし、その研究成果を家具やインテリアプロダクトとして発表を続けていた。このプロジェクトを続けているなかで錆模様の美しさを再認識し、この美しさを何か他のジャンルに応用できないか、と頭の片隅で考えていた。そんななかで例の“絵”と出会った。この織の技術と錆の美しさを掛け合わせたらどんなものができるのだろう…。この瞬間に私のなかで「創造の想像」が始まった。

互いにこれまでのクリエーションを見せ合い何が協業できるのか模索するなかで、発表時期も決めず、何を作るかも決めず、ひたすら実験と会話を続け、道筋のない新たなものづくりの領域に踏み入れる緊張感と高揚感を感じ、デザイナーとして幸せな時間を過ごした。そして2種のジーンズが完成した。それは私が最初に1人で想像した創造を軽々と超え、2者でしか成し得ないプロダクトが生まれた。  

これまでISSEY MIYAKEが積み重ねてきた創造の歴史のなかで、宮前義之さん率いるA-POCチームと共に新たな"1枚の布"を一緒に作ることができたことを大変光栄に思い、プロジェクトに関わっていただいた全ての方に感謝し、ここに発表できることを嬉しく思います。ぜひより多くの方に、実際にプロダクトを手に取って、目で観て肌で感じていただけると幸いです。

狩野佑真
1988年栃木県生まれ。東京造形大学デザイン学科室内建築専攻卒業。アーティスト鈴木康広氏のアシスタントを経て2012年にデザイン事務所「STUDIO YUMAKANO」を設立。ネジ1本からプロダクト・インテリア・マテリアルリサーチまで、実験的なアプローチとプロトタイピングを重視したプロセスを組み合わせて、様々な物事をデザインの対象として活動している。近年はミラノやパリをはじめとする欧州や日本国内の様々な場所で精力的に作品を発表している。主な受賞にグッドデザイン賞、M&O Rising Talents Award、German Design Awardなど。武蔵野美術大学空間デザイン学科特別講師(2019年〜)、建築学科非常勤講師(2022年〜)